第185回 氏か、育ちか(遺伝子か、環境か)
イリノイ大学のロビンソン教授の論文が2009年に明らかにしたのは、育ちが遺伝子に与える影響だ。
非常に気性が穏やかなイタリアミツバチと、集団で人を刺し殺すこともある獰猛なキラー・ビー、それぞれの幼虫を孵化一日目で別種の巣に移し、二種類のミツバチがどのような性格に育つのかという実験を行った。
養子に出されたイタリアミツバチは、養い親のキラー・ビーと同じように切れやすく攻撃的になり、逆にイタリアミツバチに育てられたキラー・ビーは、育て親に倣っておとなしくなるという。
二重らせんで成り立っているDNAやDNAが巻き付いているヒストンたんぱく質を有機分子が後天的に科学装飾(DNAのメチル化やヒストンのアセチル化)するもので、これが親から受け継いだ遺伝子情報をオンにしたりオフにしたり調節しているのだ。
すなわち、ライフスタイル・食生活・社会的変化・環境汚染・心理的変化(ストレス)によって、遺伝子の状態が変わるのだ。