第187回 自閉症は生得的な脳の器質異常だろうか


 川崎医科大学の小児科教授であった片岡直樹は、1980年代から「生まれた直後からテレビ・ビデオづけにしていた子供たちからコミュニケーション能力が欠如していく」という現象に気がついていた。しかし、学会などでその危険性を訴えてもどの大学教授も「自閉症は脳の器質的病変によるもので、多少テレビの影響があるかもしれないがそれは本質的なものではない」と相手にしてくれなかった。2000年の春、彼は日本小児科学会の子どもの生活改善委員会に自分で立候補しその委員になった。委員になれば無条件で論文が発表できるからである。
 「新しいタイプの言葉遅れの子供たち―――長時間のテレビ・ビデオ視聴の影響」という学術論文が日本の医学会で発表されたのは2002年のことであり、片岡教授が行動を開始してからすでに10年以上が経っていた。同じ年の同じ10月の日本小児科学会雑誌に、橋本俊顕が「自閉症の脳科学」という総説を発表している。脳病理、脳画像からみた自閉症の器質的異常について述べた論文である。なにか学会が片岡教授の発表を認めないと言わんばかりの対応である。
 しかしこの論文も、自閉症の成因として脳の器質的異常を肯定的に述べたものでは決してない。脳の解剖学的異常が指摘されている部位が報告者により全く一定せず、またこれらの異常部位がどのように関連して症状を発現するのか、そして遺伝子・神経科学所見との関係はどうか、各脳部位の成熟速度との関係はどうかなどの問題点は一切解明されておらず、しかもこれらの脳異常部位が二次的な変化の可能性もあるとしているのである。
 このように、自閉症の成因として、脳の器質的異常が解明されていないにもかかわらず、自閉症を扱う日本小児神経学会は、自閉症の成因を生得的な脳の器質的異常と断定しているのである。学会は、この矛盾する事実を突かれて母親の心理状態を考慮してのことであると言い訳する始末である。
 演者は、脳の器質的異常は自閉症の二次的反応による脳変化ではないかと考えており、少なくとも日本小児神経学会が、明らかな根拠も提示できないにもかかわらず、自閉症を生得的なのうの器質的異常と決めつけていることに対して、疑義を呈したいと思う。







































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